ながうらら | むかし長浦で

長浦散歩:かまくら街道

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かつて代宿から久保田浜宿を経由し久保田の各集落へと続いていた古道。浜宿団地の有志の方々を中心に結成された「里山を歩く会」によって復元され、現在も整備に力が注がれている緑豊かな土の路です。今回は「かまくら街道」入口から久保田保育所までの農道を含めたおよそ1.7km(出典:「里山を歩く会と久保田の里山の記録 2000年―2016年」資料)の道のりをご紹介します。

ちなみにここでの「かまくら街道」は看板のある入口から「笠上観音正福寺」へと抜ける路とされています。「かまくら街道」という名称の根拠について「長浦むかし:「旗立て(はったて)」と呼ばれた頼朝ゆかりの海沿いの台地」にて考察しているので興味のある方は、ぜひどうぞ。

「かまくら街道」と周辺の山路については「里山を歩く会」によって詳しい調査がなされています。こちらもぜひご覧ください。

かまくら街道 | 里山を歩く会
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長い里山道の全貌 | 里山を歩く会
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[A]かまくら街道入口

浜宿団地から久保田浜宿を通り県道287号線(旧国道16号)へと続く市道にある白い看板が目印です。Googleマップで検索する際は「袖ケ浦市久保田2741」で。最寄りのバス停は小湊バス「上ノ台」または「浜宿団地」となります。

アクセスの詳細は「里山を歩く会」のこちらのページまでどうぞ。

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[B]遠山家墓所

入り口近くにある「遠山家墓所」では平将門につながる一族の歴史を垣間見ることができます。

「遠山家由来」の碑文によると「祖は相馬の豪族遠山六郎公連と云い将門の生母田苗姫の兄君」「初代は遠山六郎公連の嫡子太郎頼利」とあります。

この「遠山六郎公連」と「嫡子」については興味深い歴史秘話があるので「長浦むかし:遠山六郎公連の遺児と久保田」のコーナーにてご紹介しています。

また同所墓石に掘られた「遠山家碑文」によると第48代当主遠山茂氏は「第四代長浦村村長」であり、その子第49代当主遠山憲氏は「第二ラジオ体操考案者」かつ「陸軍大佐・奈良連隊区司令官」にまで登りつめた人物と記されています。

「第二ラジオ体操」は「1932年(昭和7年)7月」「青壮年向きの体操としてつくられ(出典:遊戯・スポーツ文化研究所)」ました。

ラジオ体操は終戦後、一新されており憲氏の生年が1889(明治22)年であることから初代ラジオ体操の第2と捉えるのが正しいと思われます。

もともと初代第一ラジオ体操は「昭和天皇即位を祝う事業として提案(出典:ウィキペディア)」されたものです。碑文に「陸軍戸山学校教官御前体操選抜学習院教官第二ラジオ体操」とあり「御前」の文言も有力な手掛かりとなります。「陸軍戸山学校」と初代ラジオ体操のつながりの深さも知られているところです。

ちなみに初代第二ラジオ体操はつぎのサイトにて図解付きで紹介されています。
遊戯・スポーツ文化研究所「旧(初代)ラジオ体操第一・第二」

旧(初代) ラジオ体操第一・第二 - 遊戯・スポーツ文化研究所
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いずれにしろ遠山家は長浦の名家のひとつであるといえるでしょう。

[C]広葉樹古木のそびえる雑木林

「かまくら街道」で最初に出迎えてくれるのは、太い幹の古木がつぎつぎ登場する広葉樹の雑木林です。明治初期は松林のようでしたが、温暖化や害虫などの影響で植生が一変してしまったようです。

かつてこの一帯の村々では雑木林の枝を集め江戸のかまどの燃木や炭としてコメなどとともに木更津船に載せ出荷していました。一部は組合山として管理され重要な収入源となっていました。そうした古の営みに思いを馳せてみるのも一興でしょう。

訪れたのは寒中の1月10日であったため枯れ模様でしたが、春から夏にかけては生命力あふれる緑とマイナスイオンが、訪れる人を体の内側から元気にさせてくれるに違いありません。

[D]休憩広場

最初の休憩ベンチです。坂道を登った後なので、ちょうどよい一服ポイント。飲み物でのどを潤し熱中症を防ぎましょう。

「里山を歩く会」では例年ほぼ月2回定例作業として「かまくら街道」の保全に努めており、こうした憩いの場も訪れる方々のために草刈り、補修などを実施しています。

[E]撮影ポイント

休憩広場を過ぎても、広葉樹の古木の路が続きます。下の画像はおすすめの撮影ポイント。葉の茂るシーズンはまさに「緑のトンネル」と化します。

[F]分岐点

緑のトンネルを過ぎると分岐点に差し掛かります。

まっすぐ下ると久保田住宅街の「久保田青年館」を経由し「久保田会館」へと通じます。

右が「かまくら街道」。「梅園と休憩所」から「西国三十三霊場参拝記念碑群」を経て笠上観音正福寺へとつながります。

今回は左の「陸橋」を経由し「久保田保育所前」をゴールとする道のりですが、まずはこのまま「かまくら街道」を進んでみましょう。

[G]梅園と休憩所

分岐点を右へ進むとすぐさま視界が開けます。最初に目に入るのが一面の梅の木と竹で拵えた立派な休憩所。1月~2月にかけてここは梅の花の香りに包まれる隠れた花見の名所となります。大きなヤマザクラの木もあり、春にかけて見どころ満載の場所です。

このヤマザクラの下の北側には切通しの坂道があり、かつて長浦小学校の通学路でした。現在当時の面影はありませんが、海や工場を一望できる眺めの良い場所でした。切通しでは落ち葉を足で蹴り砂埃を舞わせ後からくる友だちを困らせたりしたものです。このヤマザクラのそばで目の前に雷が落ちたと豪語する児童もいました。

「山里を歩く会」の方によると梅園は久保田浜宿在住の地主さんのご厚意により無償で借り受け管理されているそうです。ここで実った梅の実の販売会もあるそうなので、興味のある方はぜひ同会のホームページまで。

[H]西国三十三霊場参拝記念碑群

「梅園と休憩所」の南西側を抜け笹やぶを潜ると笠上観音正福寺の裏手山へと抜けます。

そこには久保田の村人が西国三十三霊場巡りに出向いた参拝記念の碑がいくつも建立されています。

こちらについても「里山を歩く会」のホームページで詳しく紹介されているのでぜひご覧ください。

西国三十三番霊場石碑 | 里山を歩く会
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[I]竹林

さて梅園から[F]分岐点まで戻り「かまくら街道」を外れ「陸橋」へと向かいましょう。すると見事な竹林が待ち受けています。こちらも緑の濃い季節にはおすすめの撮影ポイントです。

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竹林には小さな石の祠があります。地域の方が信仰する何かの神様が祀られているのでしょう。藁で編んだ正月飾りに紙垂が付けられています。紙垂がなければ仏であり墓石です。わずかな差異ですが、人は神と仏を区別しながら同様に崇めてきました。

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[J]分岐点

竹林を抜け、しばらく進むとちょっとわかりにくい分岐点に差し掛かります。ここは左の路を選びます。

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[K]分岐点

またしばらく進むと開けた農地の先に分岐点があります。こちらも左に進みます。

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すると浜宿団地の家並みが見えてきます。その手前斜面にも大きな広葉樹が。

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さらに進むと茶葉の一列が。昔この辺りでは台地の日当たりのよさを活かした茶畑があちこちにありました。よく見るときれいに剪定されており、季節の摘み取りがしっかり行われているようです。

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[L]陸橋(富士山ビューポイント)

茶畑を先へ進むと平成通り(八幡椎津線)に架かる陸橋へとたどり着きます。ここも今回のコースのおすすめ撮影ポイント。じつは天候に恵まれれば富士山が眺められるのです。

この橋を渡り切るか切らないところで右手をご覧ください。

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どうです。遠くに見えませんか? 赤い矢印の先にしっかり富士山がそびえていますよ。

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ちょっと望遠で拡大してみましょう。

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本日は1月10日。寒の入りから5日経った厳冬期の風景です。tenki.jpによるとこの時間帯の天気は晴れ。気温は6.5℃。湿度52%。北の風2m/s。もう少し湿度が下がっていればよりクリアに見えたでしょう。

[M]山の貝殻

「陸橋」を渡ると小規模な切通しに入ります。その左の土手をよく見ると貝殻が落ちているのがわかります。

この一帯の台地は古代に集落が点在し、土器も出土しています。この場所にもかつて住居があったのかもしれません。海で採取してきた貝を食べ、その殻を生活や農耕の邪魔にならない決まった場所に捨て積んでいく。そうした習慣は昭和半ばごろまでこの地域にありました。祖先のそうした営みを確認できる場所です。

[N]笹のトンネル

切通しを抜けると開けた畑地の脇に「笹のトンネル」が見えてきます。暗くてちょっと怖いですが、これをくぐります。

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[O]分岐点

「笹のトンネル」を抜けたらゴールの「久保田保育所」まではあともう少し。ここをまっすぐ進むと造成地に出ます。そこにも土の路がわずかに残りますが、景色にめぼしいところはありません。右折しゴールへと向かいます。

路を右折し、畑を横断すると久保田住宅街へと続く下り坂があります。

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坂を下っていくとゴールの「久保田保育所」が見えてきます。

[P]釣鐘

坂を下り切りアスファルトの車道に出たらゴール。振り返ると釣鐘があるので、それが目印です。JR長浦駅からはこちらが近いので、逆のルートをたどるのもまたおもしろいでしょう。

車道を右に進むと平成通り(八幡椎津線)へと続きます。

[Q]久保田交差点

しばらく進むと平成通り(八幡椎津線)の「久保田交差点」へ。

さてここらで解散としましょうか。おつかれさまでした。

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